Dirty Harry ダーティーハリー
混沌が生んだヒーロー
1960年代から70年代における米国は、公民権運動・ケネディ大統領暗殺・ウォーターゲート事件・ベトナム戦争など、政治も世相も混沌とした時代でした。腐敗や怠慢で犯罪が助長したこの時代に、それ以後の刑事映画やアクション映画を変えたと言っても過言ではない作品が登場します。サンフランシスコが舞台の「ダーティーハリー」です。「ローハイド」やイタリア映画のマカロニウェスタン以降、あまりパッとしなかったクリント・イーストウッドが主演でした。ですがその後の彼の代表作であり、大スターに押し上げた作品です。シリーズ化されてVol.5までありますが、最初の作品がとにかく鮮烈でした。作品に登場するS&W M29も有名になりましたね。装填する.44マグナム弾は(直径11.2mm)もあり、装弾は6発で元々は狩猟用の物です。これで撃たれたら犯人も震えあがりますね。10年前アメリカに行った時に、インストラクターの指導で1回だけシューティングで経験した事がありますが、ものすごい緊張感で感触を全く覚えていません。作品ではキャラハン刑事(クリント・イーストウッド)が自在にこの拳銃を使用します。組織と規範に反骨精神をむき出しにし、時には暴力も辞さないで凶悪犯と向き合うキャラハン刑事ですが、彼に立ちはだかるものに「ミランダ警告」がありました。逮捕・拘束する時に「黙秘権等」がある事を犯人に告げなければなりません。これで、作品中の凶悪犯が釈放される事態になります。この時にキャラハン刑事が検事に「被害者の人権は誰が守るんだ!」と声高に言い放します。
その男『スコルピオ』
鮮烈な第一話は帰還兵と思われる男が、無差別に殺人事件を起こしていきます。最初の被害者は屋上のプールで泳いでいるところを狙撃されます。捜査にあたるのは汚い仕事・事件を任されるサンフランシスコ市警察本部捜査課、通称「ダーティハリー」と呼ばれるハリー・キャラハン刑事。狙撃地点に残されたメモから犯人は「スコルピオ」と名乗る。「スコルピオ」は市警察に10万ドルを要求。応じなければ次はカトリックの司祭か黒人を殺すと予告。市警察は要求を拒みその結果、10歳の黒人少年が殺害され、さらに14歳の少女を誘拐し再度10万ドルの身代金を要求する。身代金を支払いを決意した市は、その引き渡しにハリー・キャラハン刑事を選任。引渡し現場での「スコルピオ」の狡猾な要求に、ハリー・キャラハン刑事は怪我を負うも「スコルピオ」にも足に大怪我を負わせる。必ずどこかの病院に行くはずと、確信したハリー・キャラハン刑事は「スコルピオ」を治療した夜間病院の医師の話から、居場所を突き止め強引な方法で、少女の居場所を吐かせるも少女は既に亡くなっていた。逮捕された「スコルピオ」だが、ミランダ警告を無視した強引な方法で自白させたと言われ、決定的な証拠もない事から放免されてしまう。さらに「スコルピオ」は黒人無資格医師に金をわたして、自分を殴らせ怪我を負いハリーにやられたと警察に届け出る。これによりハリーは謹慎処分を受ける事になるが・・・
決めゼリフ
数々のシーンで、ハリー・キャラハン刑事はスラングがかった決めゼリフを発します。あるシーンでは毎朝行くコーヒーショップで、女性が人質になります。ここでの決めゼリフが「Go ahead make my day」(さあ、撃たせてくれよ)特に有名なのが、「スコルピオ」との最後のシーンの決めゼリフ「you’ve got to ask yourself one question:”Do I feel lucky?” Well do ya, punk!」(賭けてみるか、“今日はツイてるか?”どうなんだクソ野郎!)この後は『スコルピオ」どうなったかわかりますよね。
▪️1971年アメリカ映画 ▪️配給:ワーナー・ブラザース▪️監督:ドン・シーゲル
▪️CAST: クリント・イーストウッド/アンディ・ロビンソン(スコルピオ)
『ダーティハリー』© Warner Bros. Entertainment Inc.